地獄のウィルヘルムハーフェン上陸作戦
〜SPI第二次欧州大戦リプレイ〜


登場人物

★西部戦線枢軸軍
アサノ大総統
 我田引水、傍若無人、ひたすらわがままを通しているように見えて、実はシラガー参謀総長にいいように操られている、かわいそうな人。

シラガー参謀総長
 ひたすらアサノ大総統にへつらっているように見えて、実は総統閣下の言うことは何も聞いていない。無責任参謀総長ここにあり。

★東部戦線枢軸軍
スギサンシュタイン将軍
 作戦は理にかなっているのだが、常に勝負どころでツキがないために勝ちを逃してしまう、不運の人。北方軍集団を指揮。
しゅぴぴ宇佐美将軍
 「しゅぴぴ」と呪文を唱えながら指揮を執るが、なぜか影が薄い。南方軍集団を指揮。
☆西側連合軍
フューラー中村:連合軍司令官
やまね「せん」:連合軍副司令官。フューラー中村にいぢめられているように見えて、実はそれを悦んでいる。

最狂怪人くつるおか1号さま(特別出演)
 ご存知くつるおかの呼び声の主人公。史実では登場していないため、今回はちょい役。
☆ソ連軍
同志フルタニシチョフ書記長(特別出演)
 人呼んで「ボー研のコミッサール」。悪の限りを尽くし、権勢を欲しいままにしているように見えるが、実は小心者。
大怪鳥ミズキンスキー将軍
 ボー研の創始者。ボー研の象徴にして現人神であるため、恐れ多くてだれも彼をとがめることが出来ない。
いけしゃんスキー将軍
 ボー研最年長であるにもかかわらず、1番若く見られる「最年長のお子様ゲーマー」。アフリカを好むため「イタリアのいけしゃん」とも呼ばれている。ウクライナ方面軍を指揮。
マルゲンビッチ将軍
 その無配慮な放言が人々のひんしゅくを買い、「ひんしゅくマルゲン」の異名をほしいままにする。バルト方面軍を指揮。


ACT.1秋の日のヴィオロンの…ただひたぶるに泣きわめき
ACT.2 ニ・バス!ボウ?ノルマンジー!?
ACT.3 愚かなる大衆を粛清せよ
ACT.4 1025湿地の戦い
ACT.5 北方軍集団怒濤の退却
ACT.6 連合軍強襲上陸と空挺降下の雨あられ
ACT.7 ドイツ軍怒濤の直進退却
ACT.8 狂気のジークフリート線突破作戦
ACT.9 狂乱のウィルヘルムハーフェン上陸作戦
ACT.10 ベルリンまであと3ヘクス!?

ACT.1
秋の日のヴィオロンの…ただひたぶるに泣きわめき

 1944年5月、連合軍のフランス上陸は目前に控えていた。
 迎えうつドイツ軍は、このとき西部戦域に専属のプレーヤーを配属しておら ず、いきおい総統大本営のアサノ大総統と、シラガー参謀総長が西部戦線の直接指揮にあたることとなっていた。今、ここ第二次欧州大戦合宿の会場となった萩国民宿舎にある総統大本営では、アサノ大総統がシラガー参謀総長を相手に、作戦方針演説をぶっていた。
「諸君。私は諸君ら全軍に司令する。"大西洋の壁"をもって、連合軍の前に立ちふさがれ。連合軍の軟弱者どもは我が領土に一歩も記すことは不可能である。
   (一息おいて)
 私はこのドーバーの魔の海を、連合軍将兵の墓場にしようと思う。
 では作戦を説明する。言うまでもなくこれは「第二次欧州大戦」の和文ルールブックである。これによれば、このゲームでは、海上から侵攻する敵軍に対しては、空軍が絶大な効果を発揮する。すなわち、海上移動妨害に4ポイントの空軍を配置すれば、海上移動する連合軍ユニットは全て4/6の確率で水没してしまうのだ。ところが、圧倒的空軍力を誇る連合軍がいくら制空権を取っても、我が軍の海上移動妨害を阻止するうえでは全くの無力なのだ。なぜなら、制空権を取っても敵空軍1ポイントを除去できるだけなので、我がドイツ軍が制空に1ポイントも空軍を配置しなくても、海上攻撃に全空軍を配置したら、我が軍の海上移動妨害を阻止することは不可能なのだ。よって、敵の2/3は海上で撃滅することが可能である。こうして連合軍の2/3は、我ら空の荒鷲によって、海の藻屑と化す。
 そこで私の次の手だが、このゲームは半マストアタックと言うユニークなシステムを用いている。これはどういうシステムかと言うと、攻撃をかけるかかけないかはプレーヤーの任意であるが、いったん攻撃をかけると決意したならば、隣接する全ての敵に攻撃をかけなくてはならないと言う、世にも珍しいシステムなのだ。従って攻撃を行う場合は、いわゆる捨てゴマ攻撃を行わなくてはならないが、このゲームでは最小攻撃戦力比が1対2以上と比較的高いので、捨てゴマ攻撃にも大きな戦力を割かなければならない。その上、このゲームではCRTが極めてハイオッズ型に出来ているので、低い戦闘比での攻撃は自殺攻撃である。ところがノルマンジーの狭い戦場では、両軍とも狭い戦線に多くのユニットがひしめき合うので、もともと高いオッズは作りにくい。その上に捨てゴマ攻撃に多くの戦力を割かれるため、高いオッズでの攻撃など不可能だ。したがって敵は2/3をドーバー海峡に沈められたうえ、辛うじて上陸に成功した残る1/3も、半マストアタックルールによって、我ら戦線の突破もかなわぬまま、大陸に骸をさらす。
 我が装甲部隊に叩き潰されるか、ボカージュの露と消えるか、ドーバーの魔の海に呑み込まれるか、連合軍どもの選ぶ道はこの何れかしかない!!よって私はあえて宣言する!!
我が帝国は、3年続くであろう!!」
…アサノ大総統は、この予言通り、3年後に退位(卒業)なさるのであるが、それは別の物語である。話を元に戻そう。シラガー参謀総長が幇間よろしく追従する。
シラガー
「総統はそうとう自信がおありのようだ。」
アサノ大総統
「その下らんダジャレはいい加減に直らんのかね。シラガー参謀総長。」
シラガー
「総統はそうとうお怒りのようだ。」
アサノ大総統
「…」
アサノ大総統がシラガーの愚にもつかない駄洒落に頭を抱えている頃、総統大本営の電話のベルがなった。
「ジリーン.はい、こちら総統大本営、はっ、総統、連合軍司令官のフューラー中村からお電話です。」
アサノ大総統
「フューラーだと。連合軍のくせして、総統であるこの私より偉そうなやつだな。もしもし、世がアサノ大総統である。」
フューラー中村
「私だ。実は今度のプレーは、和文ルールには半マストアタックであると書いてあるが、ただのメイアタックで行うことになったのでよろしく。
アサノ大総統
「難だとっ!!いくら貴様がゲームオーナーでも、勝手にルールを変更するなどと言う独善的なことが許されるのかッ!!」
フューラー中村
「そんなこといったって、マストアタックだと、連合軍が勝てないんだもーん!!!」
アサノ大総統
「きッ!きさまッ!自らの未熟を棚にあげて、勝てないのをルールのせいにし、あまつさえ神聖なるルールを独断で変更しようなどと言う仕業、言語道断斉藤道三!!与が成敗してくれるからそこに直れ!!」
フューラー中村
「だってオリジナルの英文ルールでは、ただのマストアタックだと書いてあるぞ。」
アサノ大総統
「なにッ!!そんなバカなッ!!」
英文ルール和訳の大家であるアサノ大総統は、あわててシラガーから英文ルールをひったくると、さっと顔色を変えた。
アサノ大総統
「まさかそんなはずは…たしかにそう書いてある。」
アサノ大総統は、自らが構築した緻密な理論が、がらがらと音をたてて崩れていくのを感じていた。
フューラー中村
「この当時のH社のルールブックは誤訳きついからねー。それからついでに、制空権のルールはこのままじゃ連合軍が上陸できないから変更するね。じゃーそういうことで、よろしく。ガチャッ。」
フューラー中村は言いたいことだけ言うと、とっとと電話を切ってしまった。相変わらず無責任なシラガー参謀総長は、敵にまで追従する。
シラガー
「いやーおどろきましたなー。ただのメイアタックだっただなんて。しかしわざわざ英文ルールなどを読んでまで、その様などーでもいーことを知ろうとするなんて、敵ながら見上げた根性、あっぱれあっぱれ。これで我が軍の防御戦略はあっけなく崩壊ですな。あっはっは。」
次の瞬間、まるで他人事のごとく無責任な言辞を弄していたシラガー参謀総長の首に、目を血走らせたアサノ大総統の手が伸びていた。
シラガー
「うっ…ぐるじい。わたしがいったいなにを。わたしはただ、わた…」

 この取っても意味のない制空権"のルールと半マストアタックルールは、SPI輸入版時代のH社和文ルールの2大チョンボであった。なにしろ旧シミュレーター誌のゲーム紹介には"このゲームは半マストアタックと言う特殊なシステムを用いている"と堂々と紹介されており、攻撃側が著しく不利なこのルールを信じてプレーされた第二次欧州大戦のリプレイで、フランスが41年まで持ちこたると言うとんでもない展開になったのは当然といえよう。
 その後、ルールの不明瞭な点についての打ち合わせが持たれた。その結果、メイアタックのルールの誤訳問題の他に、とっても意味のない制空権のルール、パルチザンのルール等について問題点が指摘され、参加者の協議によって、該当する部分のルールを変更もしくは合意が図られた。これで問題は解決され、まともなゲームがプレーできる体制が整った…はずであった。

シラガー
「しかし弱りましたな、総統。半マストアタックのルールは明かな誤訳だから仕方がないとして、我々が頼みにしていた、"とっても意味のない制空権"のルールまで変更させられてしまいました。」
 図々しくも生き返ったシラガー参謀総長が、アサノ大総統のご機嫌を伺うかのように、先手を切って追従する。
アサノ大総統
「うむ、おのれフューラー中村め、オリジナルのルールでは、制空権を取っても空軍海上移動妨害を阻止できないのはおかしいなどと、勝手な理屈をぬかしおって、制空権を取られている側は海上移動妨害を出来ないと、ごり押しでルールを変えてしまいおった。これでは圧倒的空軍力を誇る連合軍に、一方的に有利ではないか。」
シラガー
「全くでございます。本来なら、制空権など敵に呉れてやっても、我が軍の空軍活動には何等支障がないため、両軍が平等に空軍が使用できるという、公平なルールだった筈でしたのにな。」

 実際には上のルール解釈も当時のH社製のルールブックの完全な誤訳で、本当は制空戦解決後に残った空軍ポイントが敵の2倍を越えるポイントごとに、対地支援、海上移動妨害等で出撃した敵の空軍ポイントを、1ポイントづつ除去できると言うルールが正解なのであった。従って連合軍は制空戦闘において、ドイツ軍の2倍を4ポイント上回る空軍を保持していれば、ドイツ軍の海上移動妨害を完全に封じることが出来るはずであった。これは、航空戦力において3倍以上の優勢を有して連合軍にとって、何の造作もないことであった。しかし、これらのことが明らかになるのは、これから1年以上後の、H社日本語ライセンス版が出回って後の話である。

アサノ大総統 「まあその代わり良いこともあった。活性化したパルチザンは、非活性化のパルチザンとは戦力を合計できないようにすべきだと言う、我々の主張を通すことが出来たのだからな。」
シラガー
「まったくでございます。非活性化のパルチザンは何の機能も持てないかわりに、防御力だけは5戦力と、結構高い能力を有しているのであります。ところが活性化したパルチザンは、鉄道破壊等の機能を果たすことが出来るかわりに、わずか1戦力しか持ちません。したがって活性化したパルチザンの戦力と、非活性化のパルチザンの戦力の合計を認めれば、例えば鉄道の要衝などに5枚の非活性のパルチザンと、1枚の活性化したパルチザンがスタックしていれば、26戦力もあって手出しは出来ないのに、鉄道は切られてしまうという、狂った事態が発生していたところでした。」

 真に狂っているのが他ならぬ彼らであることなど、賢明なる読者諸兄は当然お分かりであると思うが、こうして今回のプレーの体制が決定したのである。こうして連合軍のフランス上陸を目前に控えた1944年5月、萩国民宿舎内にあるイギリスのとある街角で、連合軍作戦方針会議が挙行されていた。

フューラー中村
「小官はノルマンジーこそ上陸地点として最適だと考える。その理由は、内陸への侵攻に不可欠な一級港湾の奪取が最も容易であるからである。このゲームでは補給切れでの攻撃は自殺行為である(理由は後述)が、補給網を構築するためには、移動補給部隊に依存するか、鉄道修復部隊を用いて鉄道網を構築するかのいずれかの方法を取らなくてはならない。ところが、肝心の移動補給部隊と鉄道修復部隊は、いずれも一級港湾でなくては揚陸出来ないのだ。このことにより、一級港湾の確保は、内陸に侵攻する上で絶対必要条件なのだ。
 翻ってフランス沿岸を見るに、多くの一級港湾は内陸に開けており、おまけに要塞化されている。一撃で要塞化された港湾を奪取することは不可能なため、敵は損耗した守備隊に即座に補充を送り込んで持ちこたえることができる。ところがノルマンジー半島の先端にある一級港湾シェルブールは、我々が半島の付け根を押さえてしまえば孤立してしまい、補充で回復することは不可能になる。
 
以上の結論として、我々はノルマンジー半島の根元に上陸し、一級港湾シェルブールを奪取し、そこを拠点として大陸反攻を実施すべきである。さすれば我が軍の圧勝は間違いない!!」
やまね「せん」連合軍副司令官
「いや、それよりももっと良い方法がありますぞ。ここ、ウィルヘルムハーフェンに上陸するのです。その場合第一の、そして最大のメリットは、上記の条件を満たしている港湾の中で、ここが敵の本拠地ベルリンにもっとも近いことです。戦争を早期に終わらせるに必要なことは、敵の首都を奪取することです。そのためには、敵の首都に近ければ近いほど、進撃の距離と時間を短縮することが出来ます。
第二に、おっしゃるとおり、内陸に侵攻する為には一級港湾の確保が不可欠ですが、フランス本土の一級港湾は既に要塞化が完了しております。ところがここはまだ要塞化が行われておらず、容易に奪取できる唯一の一級港湾です。
第三のメリットは、にもかかわらず、ここが味方戦闘機の制空権下にあることです。このゲームでは制空権外における海上移動では、待機状態にある空軍でも海上移動妨害を行えるため、敵航空機の攻撃を受ければほぼ確実に海没してしまいます。しかし、ここなら味方戦闘機の傘の下に、安全に上陸が行えるはずです。」
「しかしその作戦では敵の領内に突出し過ぎる。突出した部隊の側面を突かれて、逆に敵に包囲される危険はないか。
やまね「せん」
「なぜ危険のみを強調するのです。そもそも今回の遠征は、ファシスト共の圧制に苦しむ全ヨーロッパの民衆を解放し、世界に自由と平和を取り戻すためのもの。我が軍のフランス上陸によって、ファシスト共はひたすら狼狽して為すところを知らないでしょう。まさにこの時期、我が連合軍の空前の大部隊が長蛇の列をなし、狂気と圧制の旗を掲げ進むところ、勝利以外の何物が前途に有りましょうや!?」
…次第に狂気の世界に落ち込んで行った「せん」は、完全に自分の言葉に酔っていた。ところがその時だった。
「…聴こえんな〜」
 ここで再び口を開いたのは、連合軍司令官フューラー中村だった。
やまね「せん」
「は!?何か言いましたかな。」
フューラー中村
「あ〜?聴こえんな〜!!かつてデカルトは我思う故に我有りと喝破した。私が今ここで考えていると言うことが、私が存在していると言う何よりの証明である。同様に、この世の全てのものは、私が認識すると言う限りにおいて、その存在が証明されるのだ。従って私が認識しないものはこの世に存在しない。以上の結論として、私が聴いていないものは、この世に存在しないのだ。さらに言うなら、私が聞きたくないものは、この世に存在しなかったことになるのだ。」
やまね「せん」
「えっそそそれでは私の完璧な作戦は…」
フューラー中村
「貴様のような狂人の作戦など、私の目の黒いうちは絶対に実現させん。我が軍は史実通り、ノルマンジーに上陸し、フランスを通過してドイツに侵攻する!!」
やまね「せん」
「しっしかし、それでは私の立場が…」
フューラー中村
「ふはははムダムダムダ!!きさまの言うことを聞くくらいなら、サルの言うことでも聞いた方がましだあ〜!!」
やまね「せん」
「きっ…きさまあ!!え〜い・はなせえ〜い!!こいつを殺して俺も死んでやるうー!!はっ!はなせえ〜い!!」

 フューラー中村の酷薄な態度に、ただひたぶるに泣きわめく、やまね「せん」であった。こうして上陸地点はノルマンジーに、決定した。まったくやまね「せん」の言うとおりウィルヘルムハーフェンに上陸していれば、開始草々にして早くもゲームは崩壊し、狂ったプレーが展開されていたことは言うまでもなかった。かくしてフューラー中村の英断によって、プレー最大の危機は回避された…かに見えた。いや、良かった良かった。

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ACT.2
ニ・バス!ボウ?ノルマンジー!?
−なになにどうしてのるまんじー(訳:やまね「せん」)

 1944年6月、連合軍は無事ノルマンジーに上陸を行った。この上陸作戦は、誌上最大の上陸作戦として、歴史に名を残す…筈であった。

「バス!?バス!?ボウ?ノルマンジー!?」
連合軍ノルマンジーに上陸との報に接した、ロンメルの第一声であった。これをやまね「せん」は以下のように訳した。
やまね「せん」
「なになにどうしてのるまんじー」
フューラー中村
「いまのはいったい何の冗談かね?」
やまね「せん」
「冗談とは心外な。勿論奇襲されて茫然自失たるロンメルの独白を、私が得意のドイツ語の語学力を駆使して妙訳した訳であります。」
フューラー中村
「妙訳とは妙な訳のことかね!?それではまるでロンメルがあほの様ではないか。あほは貴様の方だ。私はてっきりロンメルは『何!何だと!?どこだ!!ノルマンジーだと!?』とでも言ったと思ったが。」
やまね「せん」
「ほ…ほほう。…あなたもドイツ語がお出来になるのですかな?」
フューラー中村
「報告を受ける電話の第一声で、しかも二度も繰り返しているのだから、当然『何!?』と聞き返していると見るのが常識ではないのかね。そして、前後の状況から、この電話は連合軍が上陸したとの前線からの報告以外に考えられないのだから、当然上陸地点が『どこ』であるかを尋ね、『ノルマンジー』と答えたのを聞き返しているのに違いないと言うことなど、ドイツ語など知らない三歳児でも判る理屈ではないかね?」
 かくしてやまね「せん」が三歳児にも劣る知的水準の持ち主であることが、完膚なきままに証明されたのであった。

 連合軍の攻撃は、東部戦線におけるソ連軍の攻勢に4週間先だって行われる。しかし西部戦線は当初はノルマンジーだけでおこなわれるので部隊数が少なく、短時間でプレーが進行するはずであった。ところが…
「いつまで待たすんだー!」
「遅いぞー!!」
「速くしろー!」
 東部戦線担当のプレーヤーから罵声が飛ぶ。すぐ済む筈の西部戦線の先行ターンが、いつまでたっても終了しない為であった。その理由は、連合軍の"ウンコの様な"(くつるおかさま談)空軍力であった。戦闘に参加している連合軍の地上ユニットはわずか十数ユニットに過ぎなかったが、その数倍の空軍ユニットが「空軍地上移動妨害」として、盤上に配置される必要があったのである。このため連合軍プレーヤーは、100枚近い空軍ユニットを、ただ盤上に配置しては取り除くだけの作業に忙殺され、それだけで地上軍を指揮する数倍の時間と手間がかかっていたのだった。
フューラー中村
「諸君、我々は非常に無駄な作業に労力の大半を費やしている様な気がするのだが。」
やまね「せん」
「気がするのではなく、実際に無駄なことを行っているのだ。大体空軍など戦闘結果表のダイス+1と、妨害ヘクス移動力+2くらいで、たいして役に立たない癖に、何でこんなに沢山いるんだ。」
 …最初はユニットが少ないので楽だと思っていたのに、連合軍を選んだことを深く後悔するフューラー中村とやまね「せん」であった。
 一方、西部戦線のドイツ軍プレーヤーは、連合軍プレーヤーの悲惨な有り様を見て、あざ笑っていた。
シラガー
「相当閣下、ご覧下さい。連合軍プレーヤーどものあのみじめな有り様を。」
アサノ大総統
「うむ。空軍などと言う役にも立たないものを良い気になって造り過ぎた愚か者どもには、当然の報いだな。」
シラガー
「あの、相当閣下、お言葉ではございますが、連合軍プレーヤーについては生産に関する自由裁量が認められていないのですが…」
アサノ大総統
「…そっ…その様なことはどうでも良いのだ。ともかく奴らが自らの悪行の報いを受ける様をあざ笑うことができれば、それでよいのだ。」
ところが、その時はひと事だと思っていた彼らも、自らの手番がまわってきたとき、愕然とすることになる。
シラガー
「閣下!大変です!!空が、空が見えません!!」
アサノ大総統
「何をバカなことを言っておるのだ。このゲームでは西部戦線は夏の間ずっとヨーロッパ晴れだ。その様なことがあるはずがなかろう。」
シラガー
「うそではありません!敵が七分に空は三分、敵が七分に空が三分しか見えません!!」
彼らが目撃したのは、一面に敷き詰められた空軍マーカーの海だった。
アサノ大総統
「なっ…なんじゃこりゃー!!」
シラガー
「ご覧の通り、連合軍共は空軍の航続距離の届く限りのヘクス全てに、空軍マーカーを敷き詰めおったのでございます。」
アサノ大総統
「しかし我が精鋭装甲師団の機動力を持ってすれば、例え全ヘクス+2移動力消費でも、通常移動フェイズ2ヘクス、機械化移動フェイズ2ヘクス合計4ヘクスは最低移動できるから、ノルマンジーの狭い戦場ではそれだけ移動できれば十分ではなかったのか。」
シラガー
「私が申しておるのはその様なことではございません。私が大変だと申し上げているのは、敵空軍マーカーに覆い隠されて、味方ユニットがどこにいるか判らなくなったことを申し上げているのです。」
アサノ大総統
「なに、それはいったいどういうことだ。」
シラガー
「さよう、空軍マーカーの下でユニットが行方不明になっり、もし突破口を開けた場合、そこに味方部隊がいると勘違いして突破口を塞ぎ忘れたり、はなはだしきは、敵が空軍マーカーに覆い隠された我が軍の存在を見落として、戦線を張っているはずの我が軍の真上を素通りして、いつのまにか我が戦線の後方に回り込んでいると言う事態すら発生しかねない危険性を申し上げておるのです。」
 それ以降、西部戦線を指揮されておられるアサノ大総統閣下は、連合軍が空軍マーカーを敷き詰めるのが終了する度に、下に味方ユニットが潜んでいないかを確認するために、いちいちマーカーをめくり直す羽目に陥ったのであった。結局、あれだけ膨大な空軍ポイントは、連合軍の作戦上は大して役に立たず、西部戦線の両軍プレーヤーを混乱に陥れるだけの役割を果たしたのであった。しかし、やがてその不毛な努力も終わるときが来た。無限に広がる連合軍空軍移動妨害マーカーの前に、"見えない壁"が立ち塞がったのである。
フューラー中村
「諸君、我が空軍は航続圏外でもないのに、なぜあの線から先には立ち入ろうとはしないのかね。」
やまね「せん」
「判らんのかね。あれは東部戦線と西部戦線の空域境界線だ。あのむこうに飛行機を飛ばすためには、東部空域内に地上基地を確保していなくてはならないのだ。」
フューラー中村
「しかしあれ以上先に空軍マーカーが配置できないのでは、我が軍の前進にともなって西部空域内の敵支配領域が減少し、そのうちに空軍マーカーを配置できるヘクスがなくなってしまうのではないかね。」
「!!」
 やがて、彼らはそこに画期的な方法を見いだしたのである。

アサノ大総統
「いったいどうしたのだ。昨日まであれほどうっとうしかった空軍マーカーが、一掃されているぞ。とうとうやつら空軍などうっとうしいだけで何の役にも立たないと言うことに気がついて、諦めたか。」
シラガー参謀総長
「それが…やつらまたしてもとんでもないことを言い出しまして。」
アサノ大総統
「なんだそのとんでもないことと言うのは。」
シラガー参謀総長
「もう西部空域内のドイツ側支配領域の全てのヘクスに空軍を配置することが可能になったから、西部空域のドイツ側支配領域の全ヘクスは自動的に空軍を配置したことにするなどとぬかしおりまして。」
アサノ大総統
「そんなバカなーッ!!」
 かくて、西部戦線の全ての空は、連合軍の空軍の傘に覆い尽くされたのであった。

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ACT.3
愚かなる大衆を粛清せよ

 西部戦線に遅れること4ターンにして、ようやく東部戦線においても戦端が開かれた。東部戦線を指揮するドイツ軍司令官は、しゅぴぴ宇佐美とスギサンシュタインの両司令官。一方のソ連赤軍を率いるは、北からミズキンスキー総司令官、いけしゃんスキー司令官、マルゲンビッチ司令官の3名の司令官である。いま、ここ萩国民宿舎前のアカの広場において、ソ連邦軍最高指導者であるボー研のコミッサールこと同志フルタニシチョフ書記長が、全軍に作戦方針演説をぶっていた。

同志フルタニシチョフ書記長
「我が忠勇なる同志諸君!!いよいよ我々の長年の念願であった、世界大革命を実現する時がやってきた。私は諸君ら全軍に指令する。我が赤軍の圧倒的人民の海の大攻勢を持って、ファシストどもを粛清せよ!帝国主義者の手先であるファシストどもは、我が領土から一歩も生きて出ることは不可能である。
  (一息おいて)
 私は母なるロシアの赤い大地の下に、ファシストどもを葬ろうと思う。
 では作戦を説明する。言うまでもなくこれは我が母なるロシアの大地である。
 作戦開始時点の状況は、南方では我が突出しているのに対し、北方ではファシストどもが突出している。この状況で攻勢をかける我が赤軍の選択肢は、3通りに別れる。第一は、白ロシア方面軍がドイツ軍の北方軍集団を正面から攻撃し、白ロシアから叩き出すと言う作戦、第二は、ウクライナ方面軍が西方へ直進し、ルーマニアのプロエシェチ油田を奪取し、ドイツの戦争遂行能力にダメージを与える作戦、第三の、最も有効な作戦は、ウクライナ方面軍の位置するプリャピチ湿地の南方に主力部隊を配置して、ドイツ軍の戦線を突破、遠くバルト海に達して北方軍集団の退路を断つという作戦の3つである。
 そこで私の作戦だが、ドイツ軍に致命的ダメージを与えることの出来る作戦を選ぼうと思う。すなわち、プリャピチ湿地の南側を突破してバルト海に至り、北の白ロシア突出部のドイツ軍を一気に包囲戦滅する!!
 この作戦を成功させるため、我が軍の保有する全ての戦車軍団を、主攻勢を担当することになるウクライナ方面軍司令官、同志いけしゃんスキーの指揮下に組み入れる。この作戦が成功した暁には、1940年のアルデンヌ突破による連合軍主力の包囲にも劣らないばかりか、規模においてはそれを遙かに凌駕する、戦史上の金字塔を打ち立られることは疑いない!!
 抵抗して我が怒濤の赤軍に叩き潰されるか、降伏してシベリアの強制収容所の露と消えるか、自ら死を選んでバルトの魔の海に呑み込まれるか、ファシストどもの選ぶ道はこの何れかしかない!!よって私(コミッサールフルタニシチョフ書記長)は敢えて断言する!!
 愚かなる大衆を粛清せよ!!」

 まさに同志フルタニシチョフ書記長らしい、誇大妄想的な作戦構想であった。たしかに「マンシュタインプランの再来」とでも言うべきこの作戦を、ドイツ軍であれば成功させたかもしれない。しかし、彼らが指揮するのは、他ならぬあのロスケである。よってこの作戦には、ゲームを始めるまで誰も気がつかなかった、致命的な欠陥があったのである。しかし愚かなことに、この時点でそのことに気がついている人間は一人もいなかったのである…
 とはいえ、ロシア軍にもフルタニシチョフの無謀な計画に疑問を抱いた人物がいないではなかった。そう、ソ連軍総司令官にしてボー研の天皇、ボー研の現人神にあらせられる、大怪鳥(大会長)ことミズキンスキー大元帥閣下であった。
大怪鳥
「しかしその作戦では敵の領内に突出し過ぎる。突出した部隊の側面を突かれて、逆に敵に包囲される危険があるのでは。」
同志フルタニシチョフ書記長
「なぜ危険のみを強調するのです。そもそも今回の遠征は、ファシストどもの搾取に苦しむ全ヨーロッパの人民を解放し、世界大革命を成し遂げるための三里塚たるもの。我が赤軍の怒濤の攻勢によって、ファシスト共はひたすら狼狽して為すところを知らないでしょう。まさにこの時期、
我が赤軍の空前の大部隊が長蛇の列をなし、革命軍、解放軍と称して進むところ、勝利以外の何物が前途に有りましょうや!?
大会長
「貴官のいっとることはようわからんと。要するに口先だけのアジ演説ではなかと。」
 同志フルタニシチョフ書記長のこめかみがぴくぴくと蠢く。一党独裁をモットーとする彼にとって、自らの批判は許しがたいことであった。したがって本来なら彼はたちどころに相手を粛清したことであろう。しかし…
同志フルタニシチョフ書記長
(うっ…できない…恐れ多くもボー研の天皇にして現人神にあらせられる、大怪鳥閣下に弓を引く様なことが私に出来るわけがない…)
 ちょうどその時、同志フルタニシチョフが目をつけたのが、ボー研のひんしゅくマルゲンこと、マルゲンビッチ司令官だった。
マルゲンビッチ
「わしゃボー研の会員と違うから、こんな合宿どーなってもええわい。はやく終わって帰らしてくれんかのー。こんなやつらといっしょじゃと思われたら迷惑じゃけのお。」
同志フルタニシチョフ書記長
(こっ…こやつわっ…ひとが汗水たらして作戦を立てているときに、のんべんだらりと好き勝手ほざきおって…そうだ。この男であれば、処分しても誰からも文句が出るわけがない。)
「同志マルゲンビッチ。君はたしか以前に休暇旅行に行きたがっていなかったかね。シベリアなどはどうだろう。保養には絶好のところだと思うが。」
マルゲンビッチ
「なっ…なんじゃと!わしゃシベリアなんか行きたないわい!!」
同志フルタニシチョフ書記長
「そうか、そんなにシベリアに行きたいか。うんうん、そうだな、行きたくない訳がないな。
粛清!!
 同志マルゲンビッチ、貴官を国家反逆罪のかどで、シベリアの強制収容所強制労働強化30年の刑を命ずる!!
連れて行け!!愚かなる大衆を粛清せよ!!
マルゲンビッチ
「なっ…なんでじゃあ!なんでわしがシベリアなんぞに送られなならんのじゃ!」
同志フルタニシチョフ書記長
「ふっふっふっ私に逆らったものは皆こうなるのだ。」
 泣きわめきながらKGBに連行されるマルゲンビッチを横目で見やりながら、フルタニシチョフは満足そうにつぶやいた。単に彼は誰でもいいから粛清したかっただけなのだが、哀れなのはフルタニシチョフの行き場の無い怒りの矛先を向けられたマルゲンビッチであった。
同志フルタニシチョフ書記長
「はー、良いことをした後はすがすがしい気分じゃわい。それでは同志いけしゃんスキー、同志いけしゃんスキーはどこにおる。」
「はっ…いけしゃんスキー将軍はいまだ萩国民宿舎に姿を現しておりませんが。」
同志フルタニシチョフ書記長
「なにっ!まさか我が赤色革命陣営を裏切って、ブルジョアの手先どものもとに亡命を企てたのでは…」

 ちょうどその頃、いけしゃんは当時ボー研唯一の機械化部隊、愛車いけしゃんカーにひとり飛び乗り、萩の原野を彷徨していた。実はいけしゃんは集合時間に間に合わず、ひとり愛車いけしゃんカーを駆って合宿が行われる山口県萩市まで駆けつけたのだが、こともあろうに広い萩の町中のどこで合宿が行われるか、その場所を全く知らなかったのである。

いけしゃん
「こっ…ここはどこだろう」
おぢさん
「どうしたんだいぼうや」
いけしゃん
「はい、ボクのご主人さまはロシアにある萩と言うところにえんせいにたびだったのですが、ボクははぐれたご主人さまのあとをおって、この萩にやってきたのです。」
おぢさん
「そうかい。それはかんしんだね。おじさんがいいことをおしえてあげよう。ご主人さまのにおいをついせきすればいいんだよ。」
いけしゃん
「そうか!!ありがとうおぢさん!!いごぼくのことをあなたのイヌとお呼び下さい!!」
 こうして迷子のいけしゃんは、無事萩国民宿舎にたどりつくことが出来たのである。いったい何の手がかりもなしに、瀬戸内海側の宇部から遠く離れた日本海岸の萩まで駆けつけるなどという無謀な挙に出るなど、常人ならおよそ考えられない仕業であった。ところが信じ難いことに、この無謀な賭を、「いけしゃん野生のカン」でもって通してしまったことが、いけしゃんのいけしゃんたる所以であった。これが世に言う「いけしゃん野生のカン」事件の真相である。(なんの こっちゃ)
 一方、ソ連軍がプリャピチ湿地の南から、ポーランドを縦断してバルト海にいたる攻勢を企図する可能性については、当然ドイツ軍陣営も気がついていた。いま、シラガー参謀総長の指導のもと、東部戦線の司令官連の作戦方針会議が挙行されていた。

スギサンシュタイン司令官
「アサノ大総統はどうされたのですか。」
シラガー
「総統閣下は西部戦線の指揮でご多忙である。よってわたくしが諸君の相談に預かることになった。」

 じっさい、アサノ大総統は西部戦線の空軍マーカーめくりでそれどころではなかったのであるが、こともあろうに、本来なら総統を補佐すべきシラガー参謀総長は、空軍めくりにあけくれる不毛な西部戦線の指揮を全て総統に押しつけて、自らは素知らぬ顔で勝手に東部戦線の指導にしゃしゃり出たのである。

シラガー
「…我が軍からみて最も危険な正面は、ポーランド南部国境(中央軍集団)、ついでルーマニア国境(南方軍集団)、白ロシア突出部(北方軍集団)の順序である。この中では、当然危険な正面から阻止すべきだ。
 従って我が軍の重点防御正面は、ルーマニア国境及びポーランド南部国境となる。ここに僅かに残っている健全な歩兵師団を張り付け、装甲予備はポーランド国境の背後に集結させる。そして、白ロシア突出部は残りの基幹戦力の師団を配備する。」
スギサンシュタイン司令官
「お待ち下さい。それでは北方軍集団には基幹戦力の弱体師団しか残らなくなります。そのような紙のように薄い戦線では、到底持ちこたえることができません。」
シラガー
「どのみち全てを守りきることは出来ません。ならば一部に犠牲が出てもやむを得ません。」
スギサンシュタイン司令官
「なっなんですと!!それでは北方軍集団を見殺しするおつもりですか。」
シラガー
「大丈夫です。あなた方の尊い犠牲は決して無駄には致しません。過ちは繰り返しませんから、どうぞ心おきなく成仏して下さい。」
 シラガーのあまりに酷薄な台詞に、スギサンシュタインは泣き崩れたのであっ た。

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ACT.4
1025湿地の戦い

 1944年6月、"ウンコのような"(くつるおかさま談)ソ連軍の怒濤のような大攻勢が開始された。先陣を受け持つのは、いけしゃんスキー将軍の戦車集団である。彼はあたかもスピアヘッド(槍の穂先)のごとく戦車軍団を1カ所に集中し、そして叩きつけたのである。
 結果は破壊的なものになる・・・・筈であった。湿地の南のヘクス通称"1025湿地"を守備していたドイツ軍師団は、DRの結果を受けて、なすすべもなく退却に追いやられたのである。
いけしゃん
「DR!やった!ぬけた!!いけしゃんだ・るん!!」
「後退か。止むをえん。」
 スギサンシュタインが防御部隊を後退させそうになったその時である。
シラガー
「お待ち下さい」
 スギサンシュタインを制止したのは、シラガー参謀総長であった。
シラガー
「ほほーう、後退とな。その様なものは、こうしてやるっ!!」
シラガーはそう言うが早いか、後退を要求された師団をステップロスさせて、後退しなかったのである。
スギサンシュタイン
「あっ!なっ…何をなさるのです!!」
シラガー
「ふっふっふっこうすれば敵に陣地を明け渡さずに済むのです」
スギサンシュタイン
「しっ…しかし…それでは私の部隊が損耗してしまいます」
いけしゃん
「そうだそうだ!!そいつは後退しなきゃいけないんだぞ!!ちゃんとルールに従わないとだめじゃないか!!」
シラガー
「ほほーう。ルールブックには後退の結果はDEに替える(ステップロスする)ことが出来ると書いてあります。そちらの方こそちゃんとルールブックをお読み下さったのかな」
いけしゃん
「…もう少しで突破できたのに…ズルいぞ!ルールの抜け穴ばかりつついて…ひきょうもの!!」
シラガー
「卑怯者呼ばわりされるとは、心外ですな。私はルールに従って後退の結果をDEで埋めたまで。私の行為は完全に合法的であって、やましいことなど一点もございません。」
フューラー中村
「違うな。卑怯と言うのは、この私に対する最大の賛辞である。卑怯、卑劣、う〜んいい言葉だ。やはり指揮官たるものかくあらねばな。」
シラガー
「え〜い・なぜあんたがこんな所にくびを突っ込むのです。とっととお帰り下さい!とにかく、我が軍は絶対に引かぬと言ったら引かぬのです!!」
 自分のことは棚にあげて、ひたすらにわがままなシラガーであった。
いけしゃん
「でもそんなことされたら我が軍は突破できないじゃない。ねっ!今回はなしにしようよ。なかよくしようよ。ねっねっ!いーでしょ!!」
 いけしゃんお得意の"なかよくしようね"攻撃であった。かつて数多のプレーヤーがいけしゃんのおねだりに抗しきれず、そして墓穴を掘ったのであった。魅入られたかのごとく、スギサンシュタインがついふらふらと部隊を後退させようとしたその時であった。
シラガー
「私はこどもがキライだ!!」
 シラガーにこう開き直られては、いけしゃんも二の句をつげず、やむなくその場は引き下がらざるを得なかった。
いけしゃん
「クッソーゆるせない!!こうなったら二次移動で蹂躙攻撃をかけて、消耗した敵師団に止めを刺してやる!!戦車軍団前進!!」
 ところが、2次移動での突破を命じたいけしゃんに届けられたのは、戦車軍団前進不可能との報告であった。
いけしゃん
「なになにどーして前進できないの!?」
理由は、攻撃を受けたドイツ軍師団に隣接するドイツ軍部隊の存在だった。つまり、ステップロスしたドイツ軍師団を蹂躙するためには、ヘクス侵入コスト(2)+オーバーランコスト(2)+隣接するドイツ軍部隊のZOCの離脱コスト(2)+ZOC侵入コスト(2)合計8移動力必要になるのだ。ところが、8移動力あるドイツ軍装甲師団ならこの様な状況でもオーバーラン可能なのに対し、6移動力しかないソ連軍には絶対にオーバーランは不可能だったのだ。
いけしゃん
「しょーがない。次のターンで攻撃して、除去した後で2次移動で侵入しようっと。」こう考えたいけしゃんは辛うじて思いとどまったのである。
 ところがその裏のドイツ軍ターン、ステップロスしていたドイツ軍師団は補充を受けて回復してしまったのである。
いけしゃん
「ZOCにいる部隊がどーして補充できるんだ!?ずるいぞ!!」
シラガー
「ズル呼ばわりされるとは、心外ですな。ルールブックにはZOCにいる部隊に補充を与えてはならないとは、一っ言も書かれておりません。私はルールに従って損耗した師団に補充を送ったまで。やましいことなど一点もございませんな。」
いけしゃん
「でもそれじゃ我が軍が勝てないじゃない。今回だけでいいからなしにしてっ!ねっねっ!いけしゃんの小さなお願い!!」
 いけしゃんはつぶらな瞳をうるうるさせて訴えかける。いまだいかなるプレーヤーも抗しきれなかった、
"いけしゃんの小さなお願い大きな野望"である。それは、いったん小さなことだと思っていて許してしまうと、後から後からなしくずしに"小さなお願い"が拡大して行って、ついには庇を貸して母屋を取られると言う、いけしゃんの得意技であった。しかしそれも、相手が常人ならばこそである。シラガーは、いけしゃんの"ちいさなお願い"を一語のもとに切って捨てたのである。
シラガー
「わたしはこどもがキライだあ〜!!」
 またしてもシラガー参謀総長の反逆によって、いけしゃんの"ちいさなお願い"は実らなかったのである。
いけしゃん
「ちっくしょー。こーなったら力ずくでもおとしてやる!!」
こうして次のターン、怒りに燃えるいけしゃんは再度総攻撃を敢行した。ところが結果はEX。ドイツ軍歩兵師団と相打ちで、ソ連軍の精鋭戦車軍団が損耗してしまったのである。例によってシラガー参謀総長は、補充を送り込んで損耗した師団を回復させようとしたが、ここでまたしてもいけしゃんのおねだりが始まった。
いけしゃん
「ねーねーここまで粘ったんだから、もーいーでしょ!!ドイツ軍が後退したらいいな!!いーないーな!後退したらいーな!!」
 三百人のいけしゃんの「いーないーな」の大合唱であった。常人ならこれでたちどころにいけしゃんのおねだりに屈したことであろう。
シラガー
「ふん…なにを言ってもむだぢゃ!!余人はいざ知らず、このシラガー、狂ったりと言えどもその様な術策に惑わされたりはしませんぞ!!」
 ところが、シラガーはいつのまにかソ連軍の戦車軍団がドイツ軍戦線後方にまわりこんでいるのに気がついた。
シラガー
「ややっ!何ですかこれは!何故ソ連の戦車軍団がこの様な所にいるのです!!」
いけしゃん
「え…いやそれは…そうなったらいいなと思って…」
これこそ世に言ういけしゃんお得意の"だったらいいな"攻撃である。
シラガー
「えーい何ということをなさるのです!!とっととお帰り下さい!!」
いけしゃん
「ちっくしょー、もー一息だったのに…こうなったら意地でもおとしてやるっっ!!」
 その後もいけしゃんは何度も攻撃をかけたが、その度ドイツ軍は補充を受けてたちどころに回復してしまうのに対して、ソ連軍はEXを受ける度に精鋭戦車軍団が損耗して、その度に突進力が目に見えて低下して行った。
 それにしても、何故ドイツ軍はこの様にいくら損害を受けてもすぐさま補充できたのであろうか。その理由は、ドイツ軍の生産を一手に引き受けていたアサノ大総統が、この日あるに備え、補充ポイント以外のものをいっさい生産せずに、生産ポイントを貯め込んでいたからであった。
アサノ大総統
「わははははは。生産ポイントがこんなに貯まったぞ。もうかったもうかった。」
シラガー
「ふっふっふもう勝ったと思っているな。その様なものは私が生産してやるっっっ!!」
 こうしてアサノ大総統のまったく預かり知らぬ所で、シラガーは勝手にUボートや空軍と言った、この期に及んでは何の役にも立たない分けの分からないものを生産して、ドイツの国力を蕩尽していたのであった。
 一方、前線からの報告を受けたいけしゃんはびっくりしちゃっていた。全ソ連軍の精鋭を集めた筈の戦車軍団が殆ど損耗してしまい、まともな戦力を持った軍団はなくなってしまったというのである。
いけしゃん
「えーっ!もう攻撃をかける戦力が尽きちゃったって!?」
 その理由は、損耗したドイツ軍師団は、補充を受けて戦場で簡単に回復していたのに対して、ソ連軍にはそもそも補充などと言うものが存在せず、損耗した軍団を回復する唯一の方法は、本国の生産ラインに入れて、時間をかけて再建する以外には存在しないと言うことであった。
いけしゃん
「どーしてドイツ軍だけが補充を受けられるんだあ!?
ズルいズルい!!おとなはみんなウソつきだ!!おとななんかだいっキライだあー!!」
 甚大な損害を被ったソ連軍は、目的を達成できなかったのである。卑劣なシラガーの姦計によっていじめられたいけしゃんは、泣きながらおうちに逃げ帰ってしまった。いかなる窮地に立たされても、その都度「なかよくしようね」の一言で全てチャイにして免れてきた、ボー研最年長のお子様ゲーマーいけしゃん、はじめての敗北であった。

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ACT.5
北方軍集団怒濤の退却

 中央部におけるソ連軍の攻勢停止とともに、北方軍集団を一気に包囲しようと言う壮大な企図は挫折した。一方北方では大きな戦果が上がっていた。マルゲンビッチ司令官率いる白ロシア方面軍は、ドイツ北方軍集団を"卵の殻を割るように"粉砕し、一気に戦線を突破したのだった。
 中央部における苦戦とは裏腹に、かくもた易く戦線を突破できた理由は、シラガーが完全戦力のドイツ軍師団は全て中央軍集団と南方軍集団に配置し、北方軍集団は全て消耗した師団しか配置していないということであった。このため1ステップでしかも1戦力しかない北方軍集団の基幹戦力の師団は、補充で回復できないうちに攻撃を受けて、次々と壊滅したのだった。
しゅぴぴ宇佐美
「しゅぴぴぴ…!こりゃいかん。全軍たいきゃく!!」
 崩壊寸前だった北方軍集団は、かろうじて全滅を免れて全面退却に移った。北方軍集団が壊滅を免れた最大の理由は、ソ連軍がウクライナ方面軍に全戦車戦力を集中して、白ロシア方面軍には戦車戦力がほとんど存在しないことであった。このため歩兵軍団による攻勢で戦線に穴が開いても、そこから突入する戦車部隊が存在しなかったために、ドイツ軍を包囲することが出来ず、退却を許してしまう結果になったのだった。これによって北方軍集団は最初の攻勢で撃破された十数個師団を除き、生き残った部隊は戦線を離脱して、ポーランド国境に向けて退却することが可能になったのである。
 マルゲンビッチ司令官はただちに全軍に追撃命令を出した。ところが…
「なにっ!ドイツ軍が強行軍で飛ぶように退却しておるじゃと!!」
 強行軍を用いると、歩兵部隊が移動力の2倍までの移動が可能になる。そのかわり、1/6の確率で部隊が崩壊してしまうリスクが伴うのだが、たかが1戦力の基幹戦力の歩兵師団など、接敵されてしまうとほぼ確実に撃破されてしまう為、北方軍集団を率いるしゅぴぴ宇佐美将軍は、1/6のリスクを冒した方が部隊を残せる可能性が高いと判断して、全軍に強行軍での退却を命じたのである。
「やむをえん。我が軍も強行軍で追撃するんじゃ!!」
マルゲンビッチ司令官はただちにこう命令したが、この時とんでもないことが発覚したのである。
「なに!!強行軍した部隊は敵ZOCに入んじゃと!!ばかな!!なら我が軍のZOCにいる敵部隊も、強行軍を行えんはずじゃ!!」
 ところが、ルールブックには強行軍を行った部隊は敵ZOCには入れないとしっかり明記してあるが、敵ZOCにいる部隊は強行軍を行えないとは一ッ言も書かれていなかったのである。
「そんなバカな!卑怯じゃあ!!こっちはZOCには入れんのに、向こうはZOCから出れるとは、ドイツ軍は卑怯じゃあ!!」
しゅぴぴ宇佐美
「しゅぴぴぴ…!さよならあっ!!」
 マルゲンビッチの抗議も虚しく、生き残ったドイツ軍は、飛ぶような速さで、ソ連軍の手の届かない国境の彼方へと消え去ったのであった。

同志フルタニシチョフ書記長
「なにっ!ウクライナ方面軍が敗退したうえに、白ロシア方面軍は敵を取り逃がしてしまっただと!!」
(どうして我が軍の指揮官は、こうも無能な奴ばかりなんだ…)
 各地から続々舞い込む敗報に、同志フルタニシチョフ書記長は、萩国民宿舎内にあるクレムリン宮殿で、頭を抱えていた。同志フルタニシチョフのこめかみがぴくぴくと蠢く。彼の繊細な神経は、この様な屈辱に耐えることが出来ない。彼は自らの精神の平静を保つために、指揮官の責任を問わずにはおれなかった。しかし…
同志フルタニシチョフ書記長
(うっ…できない…いけしゃんスキー将軍はお子様ゲーマーといえども、ボー研最年長者、その彼を粛清するような大それた真似が、この私に出来るわけがない…
 ちょうどその時、同志フルタニシチョフが目をつけたのが、シベリアの強制収容所を脱走して白ロシア方面軍を指揮していた、マルゲンビッチ司令官だった。
マルゲンビッチ
「なんじゃウクライナ方面軍はヘボいな。ドイツ軍ごときに撃退されおって。そこへ行くと、わしんとこ白ロシア方面軍は、圧倒的大勝利で無敵の進軍じゃ。ドイツ軍ごときチョチョイのチョイじゃけの。やっぱ名将は違うの。」
同志フルタニシチョフ書記長
(この男は…おのれの正面は、弱体戦力の基幹部隊だけだったから、突破できて当然じゃ。それを、みすみす敵を取り逃がしおった分際で、偉そうなことをほざきおって…そうだ。この男であれば、処分しても誰からも文句が出るワケがない。)
「同志マルゲンビッチ。君はたしかシベリアの別荘がいたくお気に召していたはずだったね。」
マルゲンビッチ
「なっ…なんじゃと!!!やっとこさ収容所から脱走してきたちゅうのに、またわしをシベリア送りにするつもりか!!」
同志フルタニシチョフ書記長
「そうか、そんなにシベリアに帰りたいか。私は心の広い人間だ。そんなに帰りたがっている者を無理に引き留めるわけにもいくまい。
粛清!!
 同志マルゲンビッチ、貴官を反革命謀乱罪のかどで、シベリアの強制収容所強制労働強化60年を命ずる!!
連れて行け!!愚かなる大衆を粛清せよ!!」
マルゲンビッチ
「いっ…いやじゃあ!もうシベリアなんぞにいくのはいやじゃあ!」
同志フルタニシチョフ書記長
「ふっふっふっ私に逆らうやつは皆こうなるのだ。」
 わめき散らしながらKGBに連行されるマルゲンビッチを横目で見やりながら、フルタニシチョフはひとりごこちた。しかし、そのフルタニシチョフの狂いざまを冷酷に見つめる目が、電柱の影にあった。
フューラー中村
「同志フルタニシチョフ書記長…おそろしい男だ…たとえヤマダさんを敵に廻すことがあっても、この男だけは敵にしないようにしなくてはなるまい…」
 あの頑迷なフューラー中村が、唯一脅威と認めたのである。おそるべきは同志フルタニシチョフであった。

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ACT.6
連合軍強襲上陸と空挺降下の雨あられ

 さて、話は少し遡る。ノルマンジーに上陸した連合軍は、少しずつ地歩を拡大し、ようやく橋頭保から出撃できる体制を整えつつあった。
アサノ大総統
「潮時だ。そろそろ撤退しよう。」
シラガー
「もう撤退なさるのですか?もう少し粘ってもよろしいのでは。」
アサノ大総統
「卑劣なる連合軍の陰謀によって、制空権のルールが変更させられ、水際でのせん滅が封じられた。その上半マストアタックのルール変更によって、橋頭保での封じ込めも画餅と化した。このうえは如何に粘ろうともいずれは突破されてしまう。そして粘れば粘るほど後退の時期を逸して、逆に多くの戦力を失う羽目に陥るのは必定である。
 そこで私が昔『フォートレス・ヨーロッパ』で良く使っていた手なのだが、フランス全土に散らばる鈍足の『張り付け師団』がドイツ本国に退却できるだけの時間を稼いだ後、ノルマンジーで敵を食い止めていた装甲師団をさっと退却させてしまう。早い時期なら、連合軍の地上部隊は急に広がった戦場で戦うに十分な戦力はいまだ大陸に展開していないため、敵の追撃は勢いをかく。そして、可能な限り多くの戦力を、我が軍最強の防御ライン、ジークフリート線にたてこもらせる。大抵のゲームでジークフリート線の効果は非常に高く評価されているので、ここに大兵力が立てこもった場合の攻略の困難さは、並々ならぬものがある。それにはフランスで地上軍が壊滅してしまってからでは遅い。
 前進は誰でも出来るが、退却の決断と、その整然とした実施こそは、真の名将こそが良く為し得るのだ!!」
シラガー
「そこまでお考えでしたか。私などには思いもよらぬことです。このシラガー、感服つかまつりました。」
アサノ大総統
「うむ。判れば良いのじゃ。では早速旗下の部隊にそのむね実施させるのだ。」
シラガー
「総統閣下、お言葉ですがそれはかないません。」
アサノ大総統
「なんじゃと。その方、参謀の分際でおのれの職責を果たさぬと申すか。」
シラガー
「閣下、私ができぬと申します理由は、まさにその点にございます。この私はほかならぬ参謀であり、残念ながら参謀であるこの私には指揮権はないのでございます。したがって参謀であるこの私が、部隊を自らの手で移動させることは、許されないことなのでございます。」
アサノ大総統
「きっ…きさま!本当はユニットを移動させるのが面倒くさいだけなのだろう!!」
シラガー
「あっはっは。判りますう?おっと失礼、私は自らの職務に忠実なだけであります。それでは、私は部隊の生産を行わなくてはなりませんので、失礼いたします。」
アサノ大総統
「ちょっとまて。いったい誰が貴様が生産の管理をおこなうよう命令したのだ。」
シラガー
「もちろん、他ならぬこの私であります。なぜなら我が軍にはこの私以外に生産ルールを知っている人間が誰一人存在しないのであります。ああ何と英雄的な高潔な行いでありましょうか。ゆえにこの私こそ真の愛国者、真の救国の英雄とも言うべき…」
 仰天したアサノ大総統は、急いで生産トラックを調べてみた。その結果、彼が守銭奴のごとく貯め込んだ生産ポイントが、いつのまにか空軍やUボートなどの分けの分からぬものに化けていることを知り、さらに仰天した
アサノ大総統
「きっ…貴様!!いったい誰が貴様にこの様なものの生産を命じたのだ!!!」
シラガー
「もちろん、他ならぬこの私であります。なぜなら我が軍にはこの私以外に真の戦争経済を理解した人間が誰一人存在しないのであります。よってこの私が生産を行わずしていったい誰が行うであろうかと言う、まさに国家のためを思う熱情に裏打ちされた、献身的な行為なのであります。と言うわけで、私は忙しいのであります。それではこの辺で…」
 次の瞬間、そそくさとその場を立ち去ろうとしていたシラガーの首に、目を血走らせたアサノ大総統の手が伸びていた。
シラガー
「うっ…ぐるじい。わたしがいったいなにを。わたしはただ、わた…」

 無責任なシラガーを始末した後、やむなくアサノ大総統はひとりで退却戦の指揮を取らざるを得なくなった。なんとシラガーは、無責任にも他人の作戦に口を出すだけ出しておきながら、自らは1ユニットの部隊、いや指一本すら動かそうとしなかったのである。しかしその間にも、ノルマンジーからの撤退を図るドイツしんがり部隊と、追撃する連合軍との間では激戦が続いていた。

やまね「せん」
「敵は退却を開始した。この機に乗じて、一気に敵主力をせん滅する絶好の機会だ。断固追撃を行うべきである!!」
フューラー中村
「いや、それは危険が大きすぎる。なぜならいったん補給圏外に出てしまった部隊は戦力と移動力が半減する上に、攻撃をかける場合は、通常の戦闘結果に加えて自動的にAEXの結果を被ってしまう。これでは追撃続行は不可能なばかりか、下手をすると突出したところを敵の反撃を食らって袋叩きにあってしまう。"無限に広がる補充力"を有するドイツ軍と違って、人的資源に限りがある我が軍は、大きな出血に耐えられない。従って我が軍の補給圏からの突出は許可できない。
 そこで私の次の手だが、補給圏外で退却しつつある敵を叩くよりも、むしろ前線に残って退却を援護している装甲部隊を叩くべきだ。これならば我が軍の補給圏内で、より安全に戦うことが出来る。」
やまね「せん」
「しかしそれでは強力な敵と正面から戦うことになって、十分な戦果が期待できないではないか。」
フューラー中村
「大丈夫である!我に秘策あり!!万事私に任せて置き給え。」
やまね「せん」
「不安だ…とてつもなく不安だ…」

 フランス北岸に沿って退却を開始したドイツ軍は、突如現れた海峡を埋め尽くすがごとき大上陸船団に仰天した。
「あれは…連合軍の上陸部隊だ!!」  側面に現れた脅威に対し、ただちにドイツ軍は対応しようとした。ところが…
「敵襲!!後方に連合軍の空挺部隊!!」
 フューラー中村の手品の種は、退却するドイツ軍に対して側面からの強襲上陸、背後からの空挺降下の同時攻撃であった。これにより退却中のドイツ軍は甚大な損害を被ったのである。
アサノ大総統
「うぬ、側面ばかりか後ろから攻撃してくるとは卑怯千万である!!」
 ドイツ軍は甚大なる損害(装甲数個師団壊滅)を被ったものの、かろうじて崩壊を免れて本土への長い退却行の途上にあった。ところが、その次のターン、またしても連合軍は強襲上陸と空挺降下の同時攻撃でドイツ軍に襲いかかってきたのである。
フューラー中村
「ハーッハッハッハ!!どお〜だあ〜!我が軍の陸海空一体攻撃の味わあ〜!!」
シラガー
「それにしても、強襲上陸だとか空挺降下なんて言う作戦は、フツー十分な準備が必要なんじゃないですか!?本当はもっと戦略的作戦として実施される筈なのに、こんな戦術的作戦としてホイホイ実施されたんじゃ、たまったもんじゃないですよォ!!」
フューラー中村
「うはははは!キサマら虫ケラが何を言ってもムダだあ〜!要はどの様なことをしても勝てば良いのだあ〜!!この世は強いものだけが勝つことができるのだあ!力こそ正義!!私こそが正義!!この私こそが宇宙の法であり正義であり、ゲームの血の一滴までこの私のものなのだあ〜!!
 フューラー中村のあまりの狂いざまに、あきれてものも言えないドイツ軍プレーヤーにかわって、彼にたてついたのは、本来味方である筈のやまね「せん」だった。
やまね「せん」
「違うッ!だーんじて違うッ!!それは愛だッ!!愛こそが宇宙の法であり正義であり、愛こそが唯一絶対普遍の真理なのだッ!!
フューラー中村
「きッ!貴様ッ!!手下の分際で、余に逆らうと申すのか!!」
やまね「せん」
「愛だッ!!愛が全てを支配するッ!この私こそが愛であり、私が全てを支配するのだッ!!」

 この様に連合軍プレーヤーが狂いまくっていた頃、フランスから撤収したドイツ軍の歩兵部隊は、ジークフリート線への配備を成功させつつあった。理由は連合軍の指揮官にあった。即ち、フューラー中村が自軍部隊の補給圏外への突出を禁止したためであった。もともと、フューラー中村は防勢からの一気の反攻を得意とする、要するにロスケタイプの指揮官である。その彼に、華麗な機動戦など望むべくもなかった。一方のやまね「せん」に至っては、演説を垂れ流す以外に何の能もない、口先だけの運なしであった。従って、ドイツ軍が無事ジークフリート線への撤収に成功したことは、サルでも出来る容易な仕業であったと言えよう。
 こうして撤収に成功した部隊の多くは、いわゆる「張り付け師団」であり、わずか1移動力という極めて低い移動能力のために、鉄道移動以外の手段では、海岸の配備地点からドイツ国境へなどという、長駆転進は不可能だった。従ってフューラー中村が補給無視の突破を命じて、鉄道線遮断の挙に出ていたならば、おそらく故国の土を踏むことは不可能だっただろう。その意味では、アサノ大総統のノルマンジーからの撤退も、本来ならば時期尚早と言えなくもなかったが、結果として彼らはドイツ軍の本防御線であるジークフリート線への撤収に成功したのである。
 こうして本来なら進撃する連合軍と、待ち受けるドイツ軍との間で、西部戦線最後の決戦が始まる…はずであった。そして、並のリプレイであれば、かならずやそうなったに違いない。しかし、他の真面目なゲームサークルならばいざ知らず、これは他ならぬボー研プレーである。そして、その後彼らを待ち受けていたのは、想像を絶する狂気の出来事であるなどと言うことは、神ならぬ身の知る由もなかった。

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ACT.7
ドイツ軍怒濤の直進退却

 フューラー中村が退却するドイツ軍をいぢめて喜んでいた頃、東部戦線では白ロシアを発進したソ連軍が、ドイツ軍の頑強な抵抗に直面していた。進撃するソ連軍の前に立ち塞がったのは、交通の要衝にある要塞都市ブレスト・リトフスクであった。ドイツ軍はここに立て籠もり、消耗した味方が安全なポーランド国境にたどりつくまで、一歩も引かない構えであった。一方ソ連軍は、この要塞を見過ごして前進することは出来なかった。なぜなら、この要塞は西に伸びる鉄道線路の真上に立ちはだかっており、ここを奪取せねば補給線を先へ進めることが不可能だったからである。
 こうして、退却するドイツ軍を追撃せんとするソ連軍と、消耗しきった友軍が安全なポーランド国境に撤退するまで、少しでも時間を稼ごうとするドイツ軍との間で、激戦が展開された。
 ソ連軍は防御力3倍の強力な要塞に対し、軍団砲兵の砲列を並べて巨大な火力を集中した。この凶暴な破壊力に対し、ドイツ軍は2度までは補充で耐えたが、ソ連軍が要塞の背後に回り込み、連絡線を断って補充部隊の増援を阻止するや、勝敗は決した。しかし、実に1ヶ月間に及ぶ防戦により、ソ連軍の前進を阻み、友軍の安全な退却を援護したことにより、残余のドイツ軍のほとんどは、無事ポーランド国境への撤収に成功したのである。
 8月、ようやくソ連軍はドイツ軍が防衛線を敷くポーランド国境に到達したが、このとき既にドイツ軍は軍団の建て直しに成功していた。そして、ポーランド国境でソ連軍兵士が直面したのは、黒海からバルト海まで寸分の狂いもなく、一直線に続くドイツ軍戦線であった。
同志フルタニシチョフ書記長
「なっ…なんじゃこりゃーっ!!」(松田勇作の口調で)
 史実においてそうであるように、戦線の突出部は敵の集中攻撃を受け易いため、防御側は戦線を整理し、突出部を作らないように心がけることがセオリーである。そして、この作戦を極限まで押し進めたのが、このときドイツ軍が作り上げた、「戦争芸術」とも言うべき黒海からバルト海にいたる直線戦線だった。
同志フルタニシチョフ書記長
「ばっばかな!現実にこの様な数千キロにわたる真一直線の戦線などが構築できるとでも思っているのか!!」
 そのとき、しゃしゃり出たのが無責任参謀総長シラガーであった。
シラガー
「いやいやそうとばかりは限りませんぞ。我がドイツ軍の芸術的なばかりの練度のたかさが、この様な奇跡を可能にしたと言っても不思議ではありますまい。」
 他人の手柄を横取りし、わがもの顔で威張り散らすシラガーであった。
同志フルタニシチョフ書記長
「おのれよくもしゃあしゃあとその様なことを…こやつを捕虜にできれば、真っ先に粛清してくれるものを…」
 同志フルタニシチョフのこめかみがぴくぴくと蠢く。しかし、さすがのフルタニシチョフも相手がドイツ軍とあっては手の出しようが無かった。
 その時、運よく同志フルタニシチョフの目に留まったのが、再度シベリアの強制収容所を脱走して、こっそりバルト方面軍を指揮していた、マルゲンビッチ司令官だった。
マルゲンビッチ
「いまごろポーランドに来おったか、白ロシア方面軍ののろまめが。そこへ行くと、わしんとこバルト方面軍は、ポーランド1番乗りじゃ。補給が追いつかんじゃと?補給などわしみたいにドイツ軍から奪取した港湾から引けば良いじゃろ。どうしてみんなこんな簡単なことに気がつかんのじゃ。やっぱりわし以外みんなバカばっかりじゃの。」
 実際は、弱体なバルト方面軍など、ドイツ軍が取り合っていなかったと言うのが本当の所であったが、その様なことに気づくマルゲンビッチではなかった。
同志フルタニシチョフ書記長
(こっ…この男は…港湾から補給を引けだと!!ウクライナの大平原の真っ直中には港がないことくらい知らんのか!…そうだ。この男であれば、処分しても誰からも文句が出ないことは言うまでもない。)
「同志マルゲンビッチ。君はたしか過酷な戦いで病んだ精神を癒すため、神経医療施設で静養中ではなかったのかね。」
マルゲンビッチ
「なっ…なんじゃと!!!きさまがいきなり粛清などとぬかして、無理矢理わしを収容所送りにしたんじゃないか!!このうえわしを気違い扱いしようっちゅーんか!!」
同志フルタニシチョフ書記長
「判っている。確かに君には治療が必要だ。設備の行き届いた鉄格子付きのベットでゆっくり休み給え。
粛清!!
 同志マルゲンビッチ、貴官を発作性神経衰弱のかどで、ヨブ・フルタニヒト思想矯正センター強制収容を命ずること73年と7ヶ月!!」
マルゲンビッチ
「やっ…やめてくれい!わしゃまともじゃ!狂っとるのはきさまらの方じゃ!!」
同志フルタニシチョフ書記長
「連れて行け!!
愚かなる大衆を粛清せよ!!」
 泣きわめきながらKGBに連行されるマルゲンビッチを横目で見やりながら、フルタニシチョフは冷酷に言い放った。
同志フルタニシチョフ書記長
「ふっふっふっ私に楯ついたやつは皆こうなるのだ。」
 おそるべし、同志フルタニシチョフ。ソ連軍では彼のフラストレーションが貯まるたびに、一人づつ生け贄が必要なのだった。ただし現在までのところ、犠牲者がマルゲンビッチに集中しており、他に累が及んでいないのは、不幸中の幸いであった。
同志フルタニシチョフ書記長
「はー良いことをした後はすがすがしい気分じゃわい。それではちょこざいなドイツ軍めを始末することにしよう。
軍団砲兵前へ!!」
 同志フルタニシチョフが前進を命じたのが、ソ連軍のとっておきの切り札、軍団砲兵であった。軍団砲兵はソ連軍のみが保有する、ゲーム中唯一射程距離を有する部隊であり、2ヘクス先の敵ユニットに10攻撃力で間接射撃を行うことが出来る。そして、ここまでソ連軍は大会長の軍備拡張計画が功を奏し、生産できる最大数の15ユニットを所有するに至っていた。このためソ連軍軍団砲兵は、理論上は実に150火力を敵に叩き込むことが可能なのである。
 ちなみに連合軍機甲師団は9攻撃力であり、2ヘクス正面の戦線に対しては、最大4ユニットスタックしても、わずか72攻撃力を投入できるに過ぎない。これに対して、軍団砲兵の支援を受けたソ連軍は、同じ2ヘクス正面に対して、戦車軍団9攻撃力3枚スタック+同戦力の軍団砲兵50攻撃力=104攻撃力、3ヘクス正面なら実に162火力を投入することが可能であり、仮にSS3個師団がスタックしていても、4対1の攻撃で叩き潰すことが可能なのである。同志フルタニシチョフは、この破壊的な火力集中をもって、ドイツ軍を粉砕せんとしていたのである。
同志フルタニシチョフ書記長
「うはははは!!我が軍団砲兵100火力の威力をとくと思い知らせてやろう!!SS3個師団スタックぐらい軽く吹き飛ばしてくれるわ!!さあさあどいつだ!!我が100火力の威力を味あわせてくれるわ!!」
 同志フルタニシチョフの命令一下、軍団砲兵が一歩前進し、いっせいに射撃体勢に入った瞬間であった。
しゅぴぴ宇佐美
「しゅぴぴ…こりゃたまらん!!」
 その瞬間、ドイツ軍は全戦線にわたって一斉に一歩後退したのである。
同志フルタニシチョフ書記長
「アリ…!?」
 その瞬間に、ソ連軍が誇る軍団砲兵は射撃不可能になっていた。なぜなら軍団砲兵ユニットは、機械化移動フェイズにのみ移動することができ、通常移動フェイズには移動することができなかったのである。これはなにを意味するかと言うと、通常の部隊は移動してから攻撃することが可能だが、軍団砲兵は戦闘が終了してから移動するため、あらかじめ前のターンの機械化移動フェイズで、射程距離内におさめておいた敵ユニット以外は攻撃することが出来なかったのである。したがって、せっかく敵を射程距離内において攻撃可能にしても、敵が自軍プレーヤーターンで射程距離外に出てしまえば、せっかくの大火力も不発に終わってしまったのである。
同志フルタニシチョフ書記長
「おのれ!あじな真似を…今度こそ!!」
 同志フルタニシチョフは再び軍団砲兵に前進を命じた。ところが、軍団砲兵が一歩前進するや、ドイツ軍はまたしても一歩後退して、軍団砲兵の射程距離外に退避してしまったのである。
 この様にしてソ連軍がずいと出るや、ドイツ軍がずいと下がると言ういたちごっこが果てしなく繰り返された。しかも、ドイツ軍は例の直線戦線を維持したままこの後退を行ったのであった。これをちょうど衛星軌道から俯瞰すれば、黒海からバルト海にいたる長大な戦線において、一直線に並んだドイツ軍兵士が、しゅぴぴ宇佐美の号令一下、歩調を揃えてずいと後退し、再び号令が出るや、一斉に一歩後退を実施するという、信じ難いような軍隊運動を展開していたのである。
同志フルタニシチョフ書記長
「ばっばかな!この様な数千キロにわたる戦線において、一斉に歩調を揃えて後退するなどと言う軍隊運動が、現実に行える筈がない!!」
 そのとき、またしてもしゃしゃり出たのが無責任参謀総長シラガーであチた。
シラKー
「いやいやそうとばかりは限りませんぞ。我がドイツ軍の芸術的なばかりの練度のたかさが、この様な奇跡を可能にしたと言っても不思議ではありますまい。」
 他人の手柄を横取りし、わがもの顔で威張り散らすシラガーであった。
同志フルタニシチョフ書記長
「おのれよくもしゃあしゃあとその様なことを…こやつを捕虜にできれば、真っ先に粛清してくれるものを…」
 同志フルタニシチョフのこめかみがぴくぴくと蠢く。しかし、さすがのフルタニシチョフも相手がドイツ軍とあっては、手の出しようが無かった。
同志フルタニシチョフ書記長
「ええい我が忠勇なる赤軍兵士は何をしているのだ!!我が軍団砲兵だけに戦わせておいて、少しは敵の後退を阻止して協力しようと言う殊勝な心掛けのものはおらんのか!!」
 同志フルタニシチョフは周囲に当たり散らそうとしたが、自らより席次が上の大会長ミズキンスキー将軍と、いけしゃんスキー将軍に対して、そのような不敬な行為が行える筈はなかった。その時、同志フルタニシチョフが運良く目に留めたのが、ヨブ・フルタニヒト精神病院を脱走して、黒海の付近の保養所でバカンスに惚けていた、マルゲ塔rッチ司令官だった。
マルゲンビッチ
「ふん、ええ歳しおってゲームなぞ幼稚な遊びしおって。こんなゲームなんぞどうなってもわしゃ関係ないけんね。わしゃあんなバカどもとは違うんじゃ。」
同志フルタニシチョフ書記長
(こっ…この男は…我が軍が苦戦しておるというのに、ひとりのんべんだらりと遊び呆けおって…そうだ。この男であれば、処分しても誰からも文句が出ないことは言うまでもありませんでした。)
「同志マルゲンビッチ。君は、我が人民が団結して、卑劣なるファシストどもに対して英雄的な戦いを繰り広げていると言うのに、ひとりこの様なところでバカンスに耽るとは、不謹慎とは思わないかね。」
マルゲンビッチ
「なっ…なんじゃと!!!きさまが休養しろなどとぬかして、無理矢理わしを精神病院に放り込んだんじゃないか!!そのわしが貴様の言葉通り休養しとって、どこが悪いんじゃ!!」
同志フルタニシチョフ書記長
「そうかそうか。君も我が軍の英雄的な戦いに、及ばずながらも協力しようと言うその心掛け、まさに赤軍将兵の鏡である。
粛清!!
 同志マルゲンビッチ、貴官を敵前逃亡罪のかどで、突撃囚人部隊最前線配属を命ずる!!
連れて行け!!
愚かなる大衆を粛清せよ!!」
マルゲンビッチ
「いっ…いやじゃあ!わしゃあ最前線で、コミッサールの後ろ弾で死ぬのはいやじゃあ!!」
同志フルタニシチョフ書記長
「ふっふっふっ私に楯ついたやつは皆こうなるのだ。」
 泣きわめきながらKGBに連行されるマルゲンビッチを横目で見やりながら、フルタニシチョフは冷酷に言い放った。何の罪もないのに、同志フルタニシチョフの理不尽な怒りのとばっちりを受けるマルゲンビッチこそ、哀れであった。

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ACT.8
狂気のジークフリート線突破作戦

 連合軍の3度にわたる上陸/空挺作戦によって甚大なる損害を被りながら、連合軍首脳の狂乱に乗じて、ドイツ軍主力はジークフリート線の配置に就きつつあった。
 ジークフリート線。実際には要塞とは名ばかりであったこの要塞線は、たいていのゲームにおいて絶大な効果を発揮する。そしてその点においては、この「第二次欧州大戦」も決して例外ではなかった。ジークフリート線自体の効果は本来は防御力+2と決して大きなものではないが、ここにはドイツ軍のみが構築できる防御力3倍の「要塞」を、戦略過程を経ることなくただで構築できるのだ。従ってこの場合もジークフリート線上にはずらりと「3倍要塞」が並んでいた。ドイツ軍はここ、ジークフリート線を最後の決戦場に選び、一歩も引かない構えであった。
 ジークフリート線に立てこもったドイツ軍に相対した連合軍は、当惑した。ただでさえこのゲームはハイオッズ型の攻撃側に厳しいゲームである。その上、この付近は荒れ地や、河川等の自然障害が立ちはだかっており、容易なことでは攻撃を受け付けそうになかった。仮にDRを出したとしても、防御側はステップロスで戦闘結果を吸収し、頑強に抵抗することが出来る。その上、EXの結果は、有り余る補充を有するドイツ軍よりも、むしろ雀の涙ほどの補充しか与えられない連合軍に手痛いダメージとなる。従って要塞戦の本質が消耗戦であることを考えれば、その攻略には屍山血河が築かれることは疑いなかった。
 いつしか季節は夏が終わり、秋にさしかかろうとしていた。晩秋の泥寧は機械化された部隊の移動力を奪う。そして冬には全ての大地が凍りつき、全てのユニットの攻撃力と移動力が半減し、事実上機動と戦闘は不可能になる。連合軍は、それまでに決着をつけなくてはならなかった。

やまね「せん」
(ジークフリート線に築かれたバベルの塔を目の当たりにして)
「なんだあれは。これではもうどうしようもない。よって私はバカンスに入ることに決定した。バカンスバカンス。」
(現実を逃避して押入に籠もろうとする)
フューラー中村
「大丈夫である!我に秘策あり!!万事私に任せて置き給え。」
やまね「せん」
「さっきもそれで結局ドイツ軍のジークフリート線への撤収を許してしまったではないのかね。バカンスバカンス。」
フューラー中村
「今度こそ大丈夫である!我に秘策あり!!万事私に任せて置き給え。」
やまね「せん」
「ゲームなんかもうどうでもいいや。バカンスバカンス。」
(押入の中でマンガ本を読み始める)

 やまね「せん」がバカンスに耽っていた頃、メッツ近郊でジークフリート線の守備についていたドイツ軍将兵は仰天した。空に無数の落下傘の花が開き、連合軍の空挺師団が降下してきたのである。今作戦中4度目の連合軍空挺作戦だった。今度のフューラー中村の手品の種は、要塞攻撃に呼応しての空挺降下だった。通常は後退の結果はDE(防御側全ユニット1ステップロス)で埋めることが出来るのだが、例外として、空挺部隊が降下してきたヘクスで防御している部隊は、何らかの結果を被ったなら必ず後退しなくてはならないのである。従って、空挺部隊を使用すれば、いかな要塞に立てこもった部隊と言えども後退を強いられる。この様にして連合軍は2カ所で空挺作戦を行い、その2カ所でジークフリート線の突破に成功した…かに見えた。

アサノ大総統
「なにッ!またしても連合軍が降下してきただとッ!!そんなバカなッ!!」
フューラー中村
「ウワーッハッハハ!これで終わったと思ったら大間違いだぞ!!無限に広がる空軍力を有する我が軍には、まだ数度の空挺作戦を実施できるだけの空輸ポイントが有り余っているのだ!!」
シラガー
「今までに少なくとも10個師団以上は降下しているのに、連中はまだ半分も使っていません。こんなにのべつまくなしに空挺作戦ができるほど、空輸ポイントを得られる訳はありません。まさか奴ら増援表のATP(戦略爆撃任務護衛に移行できる戦術空軍ポイント)とATP(空輸ポイント)を間違っているのでは!?」
アサノ大総統
「ギクッ!」
シラガー
「総統、この様なことが許されて良い筈はありません!!直ちに抗議して下さい!!」
アサノ大総統
「ギクギクッ!!」
シラガー
「総統、どうなさったのです!!まさかATPが空挺輸送ポイントである等ということをおみとめになったのでは無いでしょうな!!」
アサノ大総統
「ギクギクギクッ!!」

 その時、盤の反対側からフューラー中村の間の抜けた声が聞こえてきた。

フューラー中村
「お〜、その"ATP"と言うのは何だか判らなかったから〜、さっきアサノ大総統に尋ねたら〜、親切に空挺輸送ポイントであることを教えてくれたぞ〜」

 この一言で、アサノ大総統が自ら墓穴を掘っていたことが明らかになったのであった。しかし、ここまで来て今更やり直せるはずもなく、アサノ大総統は泣く泣く既成事実であることを認めざるを得なかったのである。世間の皆さんは、これを読んで何と狂ったリプレーであるとお思いであろう。事実その通りなのだから仕方がないが、実はこのことですら色あせるような恐ろしい出来事が、我々を待っていたのであった。
…ともあれこうして連合軍はジークフリート線突破に成功したが、直後に訪れた"泥寧"によって、身動きが取れなくなっていた。

フューラー中村
「やむをえん。これだけはしたくなかったが、"あのお方"をお呼びするのぢゃ。」
やまね「せん」
「あっ…あのお方とは…もっ…もしや…」
フューラー中村
「わあ〜がぐう〜ん・てえ〜きぐう〜ん・ぐう〜んしゅ〜うだあ〜ん!!」
やまね「せん」
「はっ…はわわわわっ…!!その呪文はもしや…ちょ…ちょっと…あんた…」
フューラー中村
「る・りとる・くつるおか〜わあ〜が呼び出しに答えるのぢゃあ〜!!!」
やまね「せん」
「はわーっ!!やめやめ…」

どおおおおおおおおおんんん!!!

「ひょォ〜ほほほほォ〜!」

やまね「せん」
「はひーっ!!おたおたおたおたすけすけすけ…!!」
泣きわめくやまね「せん」を尻目に、すさまじい大音狂と共に姿を現したのは誰あろう、最狂邪神くつるおかさまであった。

くつるおかさま
「わあ〜がぐんはつう〜よォ〜い!!」

やまね「せん」
「そっそんなバカな!史実ではくつるおかさまはこの時代、まだ存在しておられなかったはず…」
フューラー中村
「ふっふっふっくつるおかさまは時間と空間と常軌を超越して、いついかなる時代にも何の脈絡もなくご登場されることが可能なのだ。さあ我らが邪神くつるおかさま、あのファシストどもの"邪悪な壁"を打ち破る方法をお教え下さい!!」
くつるおかさま
「…ういるへるむはーふぇんぢゃ…」
やまね「せん」
「おおっ!!その作戦はまさか…」
くつるおかさま
「ただちにういるへるむはーふぇんにじょうりくして、べるりんにしんげきするのぢゃ!!
やまね「せん」
「バカな!!その作戦は、たしか私が開戦前にフューラー中村に進言して、にべもなく却下されたはず…いかにくつるおかさまのご命令と言えど、あの頑迷なフューラー中村がいまさらその様な作戦を採用するはずが…」
フューラー中村
「おおっ!!さすがわくつるおかさま!!素晴らしい作戦であります!!これで我が軍の圧倒的大勝利わ疑いありません!!」

 思わずぶっ飛ぶやまね「せん」。その作戦は、開戦前にやまね「せん」がフューラー中村に却下された作戦と全く同じなのである。

やまね「せん」
「あっ…あのっ…そっ…その作戦は…前に私が進言した作戦では…」
フューラー中村
「あ〜?聞こえんなー!!何か言ったかナー!?」
やまね「せん」
「えっそそそそれでは…わたくしの偉大な功績は…」
フューラー中村
「ふはははムダムダムダ!!きさまごとき虫ケラがなにをほざいてもムダだあ〜!!」
やまね「せん」
「きっきさまあー!!えーいはなせえい!!こいつを殺して俺も死ぬう〜!!」 
フューラー中村の手のひらを返した様な態度に、ただひたぶるに泣きわめくやまね「せん」であった。

フューラー中村
「まあまあ落ちつき給え。それより「せん」司令官。君には新しいポストを用意した。」
やまね「せん」
「エヘエヘなんでごじゃいましょう」
 卑屈にも媚びへつらうやまね「せん」。フューラー中村に甘い言葉で釣られるや、手のひらを返したように媚びへつらう彼には、もはやプライドのかけらも残っていなかった。しかしそんな彼に、フューラー中村は過酷とも言える任務を押しつけたのである。
フューラー中村
「君にはウィルヘルムハーフェンに行って貰う。」
 ウィルヘルムハーフェン上陸軍司令官。今となっては、成功しても全ての功績はくつるおかさまとフューラー中村の手に横取りされ、失敗すれば全ての責任を押しつけられると言うこのポストは、全てのプレーヤーの恐怖の的であった。しかし「せん」が陥れられたことに気づいたのは、もはや手遅れだった。
やまね「せん」
「ええっ…そっ…それでは…
しっ…しかし、ウィルヘルムハーフェンには芸者が…」
 その瞬間、フューラー中村の眼鏡の奥がキラリと光った。そこでやまね「せん」がちらりと口走った「芸者」と言う言葉を聞き逃すフューラー中村ではなかった。
フューラー中村
「なにっ!!諸君、今何と言ったかね!?」
やまね「せん」
「えっ…いえわたしは別に何も…」
フューラー中村
「嘘を言いたまえ!今確かに『芸者がいない』と言ったね!!そう、確かにドイツには芸者もセーラームーンもいない!!(当たり前だ)しかし軍人たるもの芸者がいないと死ねないとでもいうのかね!(ダイ・アモンの口調で)いけませんネェー!ジョォドォォ!!(古代守の口調で)沖田サン!!男なら、たたかってー、たたかってー、一つでも多くの敵を倒して、そして死ぬべきじゃないんですかー!?」
やまね「せん」
「やめろお〜!もうやめてくれえ〜!!」
 鬼の首を取ったかのごとく、喜々としてやまね「せん」の傷口に塩を塗ってほじくり回すフューラー中村。そのあまりのむごい仕打ちに咽び無く、やまね「せん」であった。

 かくて1944年10月、連合軍はウィルヘルムハーフェンに上陸作戦を敢行した。今次作戦開戦以来、実に4度目の上陸作戦であった。

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ACT.9
狂乱のウィルヘルムハーフェン上陸作戦

「なにっ!!連合軍が今度はウィルヘルムハーフェンに上陸しただと!!」
アサノ大総統
「まずい。あそこはまだ要塞化工事が完了しておらん。容易に奪取されてしまう。」
シラガー
「総統閣下、ご心配無く。こんなこともあろうかと思って、ウィルヘルムハーフェンには我が軍の精鋭SS四個師団を配備してございます。彼らの力を持ってすれば、ちょこざいにも上陸してきおった連合軍どもを、北海に叩き落としてやることなど、造作もないことで…」
アサノ大総統
「そうか、それは心強いことだ。で、そのSS四個師団というのはいったいどこに…うん!?どうしたシラガー参謀総長、顔色が良くないようだが。」
 そう言いながらアサノ大総統が盤上に目を移したとき、そこにドイツ軍はなかった。あるのはただ緑とブルーの連合軍ユニットだけだった。
アサノ大総統
「こっ…これはどういうことなのかね!!シラガー参謀総長!!」
シラガー
「あっはっは。そういえば、つい先ほどマーケットガーデン作戦に備えてオランダに移動させてしまいました。連合軍がアーンエムに来ていればタコ殴りに出来るところでしたのにな。せっかくの私の心遣いを無にしおって、連合軍のきゃつら許しがたい怠慢であります。総統、この犯罪的な怠慢に対して、断固抗議すべきであります。」
アサノ大総統
「なにっ!!そっ…そうすると…ベルリンを守るべき部隊は…」
シラガー
「さよう、我々にはもはや一兵の予備部隊も残っていません。これで我が軍も崩壊ですな。いやあ、まいったまいった。いったい誰の責任でしょうな。あっはっは。」
 次の瞬間、相変わらず無責任な言辞を弄するシラガーの首に、目を血走らせたアサノ大総統の手が伸びていた。
シラガー
「うっ…ぐるじい。わたしがいったいなにを。わたしはただ、わた…」

 連合軍は、わずか歩兵二個師団が守るウィルヘルムハーフェンを、構築中の要塞ごと葬ると、ただちに内陸への進撃体制に入った。実はこの要塞はあと一週間で完成する予定で、そうなったらもはや攻略は事実上不可能になっていたのだが、連合軍は懇願するドイツ軍プレーヤーを無視して、情け容赦無く踏みつぶしたのである。
シラガー
「それにしても、強襲上陸なんて言う作戦は、フツー十分な準備が必要なんじゃないですか!?その場の気分で、しかも半年で4回も上陸されたんじゃ、たまったもんじゃないですよォ!!」
 図々しくも生き返ったシラガーが泣きわめいたが、その様なことを意に介する連合軍プレーヤーではない。この様に常軌を逸したのべつまくなしの上陸作戦によって、ドイツ軍は44年にして早くも崩壊の瀬戸際に立たされたのである。しかしこの時は誰も気がつかなかったのだが、実は1944年の冬になるとなぜか連合軍の強襲揚陸ポイントは減少してしまうため、この様なのべつまくなしの強襲上陸は不可能だったのである。従って今日ではこの作戦は"狂気のウィルヘルムハーフェン上陸作戦"として戦史に名をとどめている。もっとも、最初からならウィルヘルムハーフェンに上陸できてしまうことには変わりはなく、どっちみちこのゲームが狂った展開を取ることは自明の理であるが。
 かくして連合軍ののべつまくなしの上陸作戦と、空挺作戦は、ゲーム展開を完腐なきままに破壊せしめたのであった。さすがわフューラー中村とその一味であると言えよう。ともあれ、その様なことは知る由もない狂ったプレーヤーどもは、狂ったゲームを続けていた。
アサノ大総統
「こうなったら背に腹は替えられん。東部戦線から首都防衛のため10個師団の引き抜きを命ずる。」
シラガー
「ほほーう。東部戦線から10個師団も部隊を引き抜いてしまえば、西部戦線ばかりか東部戦線までも崩壊することは必定ですぞ。ここはひとつ総統閣下にはお休み頂いて、このシラガーめにおまかせ頂ければたちどころにこの難局を…」
 さらに傷口を広げてどうしようもなくした後でさっさと逃げ出すつもりだろう、と喉元まで出かかった言葉を呑み込んで、アサノ大総統は充血した目で無責任なシラガーの方をちらりと見やった。
アサノ大総統
「シラガー参謀総長、いったい貴官は生産と他人の指揮に干渉する以外のことを何かやったことがあるかね。」
シラガー
「私が生産と他人の指揮に干渉する以外のことを何もやっていないとは、心外であります。私は、直接指揮下にあるイタリア戦線とユーゴスラビア戦線で、立派に自らの務めを果たしております。」
アサノ大総統
「ならば聞くが、そちらの戦況は一体どうなっておるのかね。」
シラガー
「そのことならご心配なく。開戦以来、何もしておりません。」
アサノ大総統
「なんだとッ!!貴様、イタリアとユーゴ(チトーのパルチザン)を連合軍のしたいがままに放置していると言うのかッ!!イタリアとユーゴなどどうなってもいいというのかッ!!それで自分の責任を果たしているなどと良く言えたものだ!!」
シラガー
「総統閣下、ご心配には及びません。なぜなら該当戦域の連合軍を指揮しておるフューラー中村自体が西部戦線にかかりきりになっていて、イタリアやユーゴなどはほったらかしにしてしまっているのであります。したがって我が軍がここで下手に動きを見せれば、かえってフューラー中村の注意を喚起してしまうため、ここは寝た子を起こすべきではないと言う私の深謀遠慮の賜物なのでありま…」
 次の瞬間、性懲りもなく無責任な言辞を弄するシラガーの首に、目を血走らせたアサノ大総統の手が伸びていた。
シラガー
「うっ…ぐるじい。わたしがいったいなにを。わたしはただ、わた…」
 無責任なシラガーを再び始末したあと、アサノ大総統はただちに東部戦線を指揮するしゅぴぴ宇佐美、スギサンシュタイン両司令官に司令を下した。東部戦線を指揮していたしゅぴぴ司令官は、このベルリンからの至急電を受け取って、仰天していた。その至急電にはこう書かれていたのである。

発:総統大本営
宛:東部戦線各司令官
本文:「ハラヘッタ。10個師団スグオクレ」

しゅぴぴ宇佐美
「しゅぴぴぴぴっ!!これはたいへんだ!!」
 一方同じ電文を受け取ったスギサンシュタイン司令官もまた大いに驚き、直ちに彼は、しゅぴぴ宇佐美司令官に連絡を取った。
スギサンシュタイン
「こんな横暴な命令は到底受け入れられません。総統に断固抗議しましょう。」
しゅぴぴ宇佐美
「しゅぴぴぴ…それが、もう送ってしまいました。」
スギサンシュタイン
「…」
 なんと直進退却作戦のおかげで、白ロシア攻勢以来全く損害が出ていなかった東部ドイツ軍には、部隊が有り余っていたのだった。その実状を聞かされたスギサンシュタインは、だまって引き下がるしかなかった。この貴重な増援により、本土防衛のドイツ軍は息を吹き返し、辛うじて連合軍の大突破を防ぐことができたのである。しかし、それも時間の問題であった。このときドイツ軍は、東にソ連軍、西に連合軍フランス上陸部隊に挟撃されているうえに、北にまで西部戦線と同じ長さの"北部戦線"を構築され、実に3正面作戦を余儀なくされていたのである。
 こうして完全に三方を敵に包囲される形となったドイツ軍は、じりじりと追いつめられて行った。中でも最も危険な正面が北部戦線であった。1944年12月、北部戦線の連合軍は、ベルリンまであと3ヘクスの距離にまで迫っていた。ベルリンはもはや目前であった。

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ACT.10
ベルリンまであと3ヘクス!?

 時に西暦1944年11月、ドイツ軍はいま最期のときを迎えようとしていた。ノルマンジーに上陸した連合軍と、東から迫るソ連軍に加えて、ウィルヘルムハーフェンに上陸した連合軍の前に、いまやドイツ軍は東、西、それに北の3正面に戦線を構える苦しい立場に追い込まれていた。
 しかし、北部正面連合軍の補給基地となったウィルヘルムハーフェンからは、10MP以内の範囲まで補給下におくことが出来るが、それ以上内陸部に侵攻するためには、移動補給部隊か鉄道修復部隊を展開させる必要がある。しかし、西部正面連合軍と北部正面連合軍の間に横たわるオランダ低地地域では、アサノ大総統の死守命令により、一切の後退を禁止されたドイツ軍部隊が、いまだ絶望的な抵抗を続けていた。このため、西部正面連合軍戦域から、北部正面連合軍戦域に部隊を移動させるためには、海上輸送を用いる以外に方法はなかったのである。
 ここに至り、連合軍ウィルヘルムハーフェン上陸部隊司令官やまね「せん」は、総司令部に移動補給部隊と鉄道修復部隊の海輸を要請。ただちに移動補給部隊と鉄道修復部隊を積載した、虎の子輸送船団がウィルヘルムハーフェン目指して出港した。

シラガー
「総統閣下。いよいよあなたの実力をお見せ頂く時がやってきました。」
アサノ大総統
「うむ。まーかせなサーイ!!それロークでなサーイ!!ちゅどーん!!移動補給部隊撃沈!!」
シラガー
「さすがでございます。我らヤマダ教徒一同、感服つかまつりました。さあ、今度は鉄道修復部隊をお願いいたしますぞ。」
アサノ大総統
「まーかせなサーイ!!あ・それ・しーずみなサーイ!!ちゅどーん!!鉄道修復部隊撃沈!!」
やまね「せん」
「そんなバカなー!!」

 やまね「せん」虎の子の重要船団は、ウィルヘルムハーフェン周囲に張り巡らされた機雷原に触れて、ものの見事に爆沈したのであった。確率1/6×1/6=1/36である。まさに「爆沈王」やまね「せん」の名に恥じない最期であったと言えよう。やむなく彼は、再度補給部隊を海輸して貰うように、総司令部に泣きついた。ところがである。

フューラー中村
「移動補給部隊ならさっき送ったばかりではないか。なぜいまさらまた送らなくてはならないのだ。」
やまね「せん」
「だから、あれは機雷に触れて沈没してしまったと言っておるだろう。あれがなくてはこれ以上の進撃は不可能なのだ。ごちゃごちゃ言わずに移動補給部隊をとっとと送れ!」
フューラー中村
「ほほーう。人にものを頼むときは、それ相応の礼儀というものが必要ではないかね。」
やまね「せん」
「なっ…なんだと!!貴様何様のつもりなのだ!!」
フューラー中村
「言葉をわきまえよ。ここはくつるおかさまの御前であるぞ。」
やまね「せん」
「おっ…おのれえ…くつるおかさまの威を借りるフューラー中村めが…」
フューラー中村
「んン〜!?なにかいったかナ〜!?移動補給部隊が欲しくないのかナ〜!?」 卑劣にも移動補給部隊を人質にとるフューラー中村。それに対し、もはやプライドのかけらも残っていないやまね「せん」は、ただひたぶるに媚びへつらうのだった。
やまね「せん」
「エヘエヘおねげえでごぜえますからお代官さま、ひとつでもよろしゅうごぜえますから、移動補給部隊をお恵みくだせえ」
フューラー中村
「ふ…ようやくおのれの身の程を思い知ったか。さあくつるおかさま、この愚かなるしもべにご命令をお下し下さい!!」
くつるおかさま
「べるりんにいくのぢゃ…」
フューラー中村
「ををっ!!くつるおかさまはベルリンにお帰りになりたがっておられる!!(くつるおかさまはドイツ国の東広島地方ご出身なのである)くつるおか命令を伝える!!「せん」司令官、ただちに進撃してベルリンを攻略せよ!!」
やまね「せん」
「えっ…そそそそれでは我が軍の移動補給部隊は…」
くつるおかさま
「わあ〜がぐんわつう〜よお〜い!!」
フューラー中村
「くつるおかさまわこう仰せぢゃ。
 補給がなくば前進できぬなどとの言い草、言語道断。我が軍の不屈の精神力をもってすれば、補給など必要ないのぢゃ。もしどうしても移動補給部隊が欲しくば、自力で本隊との連絡路を打通するのぢゃ。
あらためて命令する。
アットー的戦力をもって、ベルリンを攻略するのぢゃ!!」
やまね「せん」
「なっ…なんだと!フューラー中村、話が違うではないか!!」
フューラー中村
「ふっ…私は移動補給部隊を送ってやるなどと約束した覚えはないな。すべてはくつるおかさまのみ心のままに、私はただそれを忠実にお伝えする、くつるおかさまのしもべにすぎん。」
やまね「せん」
「きっ…(ぷるぷるぷる)きさまあー!!えーいはなせえい!!こいつを殺して俺も死ぬう〜!!」
 フューラー中村の卑劣な裏切りに、ただひたぶるに泣きわめく、やまね「せん」であった。
 生産に関する自由裁量が認められていない連合軍にとって、限られた数しかない移動補給部隊を沈められたのは確かに痛手であったが、それでもフューラー中村指揮するフランス上陸部隊の戦区には、いくつかの補給部隊が温存されていたのである。ところがフランス上陸部隊は、ジークフリート線が強固なのと、冬季で攻撃力が半減していることを理由に、凍りついて梃子でも動かなかったにもかかわらず、「自軍戦区における必要性」を理由に、移動補給部隊の海輸を頑として拒否したのである。
 しかし、やまね「せん」も必死であった。もしベルリン攻略に失敗したら、くつるおかさまとフューラー中村による狂気の粛清が待っている。(これはロスケではない。連合軍の話である)
やまね「せん」
「ベルリンは、ベルリンはまだ陥ちないのか!?」
「ベルリンまであと3ヘクス、あと3ヘクスでベルリンに到達します!!!
 1944年12月、ウィルヘルムハーフェンに上陸した連合軍は、ベルリンから3ヘクスの距離にまで到達した。もはやベルリンは目前である。しかしここに至り、ついにやまね「せん」は力尽きた。続々と到着するドイツ軍の増援に行く手を阻まれ、加えて凍りついた大地は攻撃力と機動力を奪い、補給圏外では事実上連合軍は攻撃力1/4にまで落ちぶれていたのである。もはやこれ以上の攻勢続行は不可能であった。しかし、このような状況にもかかわらず、フューラー中村はくつるおかさまの御威光を楯に、なおもベルリン侵攻を迫ったのである。
フューラー中村
「え〜い・なにおしておる!!べるりんわまだおちないのか!!くつるおかさまわ、おまちかねぢゃ!!」
やまね「せん」
「そげなこと言っても、やっぱり補給がなければ攻撃などむりですだ、お代官さま…」
フューラー中村
「え〜い・くつるおかさまのご命令が聞けぬと申すのか!!この不届きもの!!かくなるうえわ、くつるおかさまにお仕置きをお願いするまでぢゃ。」
やまね「せん」
「あひっ…そっ…それだけはなにとぞごかんべんを…!!」
くつるおかさま
「きかぬのぢゃあ!!!
ひょォ〜ほほほほォ〜!!!!」

やまね「せん」
「あひゃら…おゆおゆおゆおゆおゆるしをーーー!!
あひーーーーーー!!!」

 やまね「せん」の悲鳴とくつるおかさまの狂気の笑いが渦高く鳴り響き、この後やまね「せん」の身の上にどの様な恐ろしい出来事が起こったか、知る者は誰もいない。ただ明らかなことは、今ではやまね「せん」が、くつるおかさまの忠実なしもべとして立派に更生していると言う事実のみである。
 そのころ、東部戦線ではミズキンスキー総司令官こと大会長が、ぶつぶつひとりごとを言いながら、南部戦線で苦闘していた。
「…ここをこう攻撃すれば敵はこう出てそうすると我が軍はああなってこうなって…ウーム…ユルセン!私が行いたいのはこの様な作戦ではなかと!!」
 彼は、ドイツ軍を打ち砕くための、完璧なまでに緻密な作戦を自らに要求して、およそ考え得る限りの全ての作戦を立案しては、それを立案するたびにご破算にしていたのである。
「こればい!!これで完璧ばい!!敵がこう来たところで我が軍がああしてこうすると敵はああなってこうなって、こう来る。
そこで、叩く!!」
 その一言に力を込めて、会長は自らの拳を強く机に叩きつけた。その瞬間、卓上に広がっていた世界は、崩壊した。

(完)

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